Rちゃんとレッスンを始めたのは彼女が5年生の春だった。
アメリカでバイオリンを習っていたことはあったけれどピアノは初めてだった。
6年生4月の発表会でショパンのワルツが弾けるようになりたい、その一心で半年間、一回一回のレッスンを大事にしながら感心するくらいコツコツ頑張った。

発表会前のレッスンでは感極まってお母さんと泣いてしまったこともあったRちゃん..
掲げた目標に向かって真摯に頑張っていたからこそ、そして一言では言い表せない今までの試練や、色々な思いがこみ上げあふれ出た涙だった..
そして当日、Rちゃんはショパンのワルツ遺作とシューマンのメロディーを立派に弾き、心の込もった演奏をしてくれた。私はあの時、皆の前でほめてあげたかった。
帰りの電車の中で、“大変だったけどまた来年も弾きたい!”と達成感に満ちた笑顔がはじけていたのを私は今でも昨日のことのように覚えている。
翌年春のピアノ発表会、Rちゃんは本当に、どんなに出たかったかと思う...
旅立たれた二ヶ月半前、”先生と二人きりでお話がしたい”と言って、お母さんに支えられながら玄関の階段を上り会いに来てくれた。
“後悔したくないから発表会の準備だけはしておきたい。ショパンが弾きたい。”と、
まっすぐな眼差しでこのレッスン室でお話してくれた。Rちゃんの芯の強さに私は心動かされた。
その日のうちに、アレンジしてRちゃんが弾ける曲を探した。
強い気持ちが何かを変えてくれると信じたかった..

芸文での私のリサイタルにも車椅子で聞きに来てくれて本当に嬉しかった。
あの日は体力的にいっぱいいっぱいだった..と後にお母さまから伺った。それでも演奏会に来てくれたこと、言葉にできないくらい嬉しかった。
あれからもう3年にもなる。
12歳のRちゃんが私に教えてくれたことは大きかった。
素敵な出会いをありがとうと彼女のニコニコした笑顔を思い出し、
毎年2月13日は過ごしたいと思う。

