パリ国立高等音楽院ピアノ科、そして伴奏科を満場一致のプルミエ・プリ(一等賞)で卒業した後、
パリで少しずつ現代音楽中心のアンサンブル・ピアニストのお仕事を頂くようになりました。
オーケストラの中で弾くピアノのお仕事です。
研鑽を積んでいた頃、ある初夏を感じさせる五月晴れの日のことでした。
ブーレーズが設立したアンサンブル・アンテルコンタンポラン(Ensemble InterContemporain)の“20世紀現代音楽アカデミー”が夏に行われると知りました。
その年はベルグ作曲、室内協奏曲(Berg Kammerkonzert) のピアノ・ソリストのオーディションがありました。
それを聞いた私はもうかなり間際でしたがチャンス!と思い一生懸命練習して試験を受けました。
後日 ”あなたがピアノ・ソリストに選ばれました” という電話を受け取ったときの嬉しさは今でも昨日のことのように覚えています。
パリの音楽都市大ホール(Cité de la musique)の大舞台をソリストとして踏めると思っただけで夢のようでした。

ベルグの室内協奏曲のソリストは二人、ピアニストとヴァイオリニスト、そして13の管楽器という編成です。
演奏時間は約40分、第1楽章はピアニストが活躍、第2楽章はヴァイオリニストが主役、そして第3楽章はソリスト2人で展開していきます。

アカデミーではソロの他に室内楽、オケ中ピアノと色々な編成の曲を勉強しました。
指揮は当時の音楽監督David RobertsonとGeorge Benjamin、
そしてアンサンブル・アンテルコンタンポランの素晴らしい憧れの音楽家のレッスンを多方面にわたって受けることができ、刺激的で充実した2週間でした。

ベルグの室内協奏曲はアカデミーのフィナーレを飾るコンサートでした。
母が日本から送ってくれた黒のセミロング・ドレスを着て舞台に立った時の忘れられない緊張感…
そして終わった時、“大きなホールで弾けてとても気持ちよかった…!”という気持ちでお客様の拍手を胸いっぱいに受けとめていたこと、その時感じた爽快な自分の気持ち…
あの日があったからこそ後のお仕事につながり今現在の私があると、遠い夏の日を懐かしく思い出します。


